• オフィス内装工事コラム

消防設備の増設や移設をせずにオフィスをパーテーションで間仕切る方法を解説

消防設備の増設や移設をせずにオフィスをパーテーションで間仕切る方法を解説

オフィスに新たに会議室を設けたい場合などに、オフィスをパーテーションなどで間仕切ることがあります。このとき、注意が必要となるのが消防設備です。
オフィスにある消防設備には、火災報知器(煙感知器、熱感知器)、スプリンクラー、排煙設備、非常用照明、非常用放送設備、誘導灯などがあります。オフィスをパーテーションなどで間仕切った場合、これらの消防設備の増設や移設が必要となる場合があります。
消防設備の増設や移設には、費用や手間がかかります。そこで、この記事では、消防設備の増設や移設をすることなく、適切にオフィスをパーテーションで間仕切る方法を解説します。

この記事は、一般的なオフィスビルに関する参考としての情報を提供しております。消防設備の規定は非常に複雑で、各自治体や所轄の消防署によって異なることがあります。そのため、具体的な設置に関する情報は、地域の消防署やビル管理会社にご相談ください。

火災報知器の増設や移設をせずにオフィスを間仕切る方法

火災報知器の種類について

火災報知器には、煙感知器と熱感知器の2種類があります。

熱感知器は火災時に温度上昇を感知して反応しますが、この方法では既に火災が進行している段階での警報となります。それに対して、煙感知器は火災初期の段階で煙を感知して作動します。そのため、火災の早期発見においては煙感知器の方が有効です。ただし、煙感知器は複雑な構造を持つため、価格が高くなる傾向があります。

煙感知器と熱感知器の見分け方

煙感知器の見た目の特徴

煙感知器は、煙を取り込むためのスリットが空いているのが特徴です。見た目はUFOっぽい感じをしています。

煙感知器の写真 法人専門内装プロ
煙感知器

熱感知器の見た目の特徴

熱感知器の見た目の特徴には、ドーム型、ガスコンロ型、芯棒型があります。

熱感知器の写真 差動式スポット型感知器
熱感知器(ドーム型)
熱感知器の写真 定温式スポット型感知器
熱感知器(ガスコンロ型)
熱感知器の写真 定温式スポット型感知器
熱感知器(芯棒型)

煙感知器の設置規定

  • 壁から60cm以上離す

  • 空調や換気吹出口から1m50cm以上離す

煙感知器の増設や移設をせずにオフィスを間仕切る方法

  • パーテーション上部に1.8m以上×0.2m以上のランマ(開口部)を設ける

    【解説】

    煙感知器を設置しているオフィスをパーテーションで間仕切る際、パーテーション上部に1.8m以上×0.2m以上のランマ(開口部)を設けることにより、パーテーション内部の部屋に煙感知器を追加する必要がなくなります。

    図解 パーテーションにランマを設けることで煙感知器の増設不要その1

    (参考規定)

    大阪市消防局、消防用設備等の設置に係る運用基準、第2章 警報設備、第1節 自動火災報知設備、第4 感知器、2 設置方法(11)キ)煙感知器(キ)

    ”間仕切壁等の上部(取付け面の下方0.6メートル未満の部分をいう。以下この項において同じ。)に空気の流通する有効な開口部(0.2メートル以上×1.8メートル以上)を設けた場合は、感知区域を1として感知器を設けることができる。”

  • 既存の煙感知器からの距離0.3m以内に、0.3m以上×0.2m以上のランマ(開口部)を設ける

    【解説】

    既にパーティションの近くに煙感知器が設置されている場合、既存の煙感知器から0.3m以内の領域に0.3m以上×0.2m以上のランマ(開口部)を設けることで、新たな煙感知器を追加する必要はなくなります。

    図解 パーテーションにランマを設けることで煙感知器の増設不要その2

    (参考規定)

    大阪市消防局、消防用設備等の設置に係る運用基準、第2章 警報設備、第1節 自動火災報知設備、第4 感知器、2 設置方法(11)キ)煙感知器(ク)

    ”間仕切壁等の上部に開口部(0.3メートル以上×0.2メートル以上)を設け、その開口部から0.3メートル以内の位置に感知器を設けた場合は、隣接する感知区域を1の感知区域として感知器を設けることができる。”

熱感知器の設置規定

  • 壁からの距離の規定はなし

  • 空調や換気吹出口から1m50cm以上離す

熱感知器の増設や移設をせずにオフィスを間仕切る方法

上部に0.3m以上×パーテーションの幅の60%以上のランマ(開口部)を設ける

【解説】

熱感知器を設置している区画に面しているパーテーションの幅の60%以上×高さ0.3m以上のランマ(開口部)を設けることにより、熱感知器の追加をする必要がなくなります。

図解 パーテーションにランマを設けることで熱感知器の増設不要

(参考規定)

大阪市消防局、消防用設備等の設置に係る運用基準、第2章 警報設備、第1節 自動火災報知設備、第4 感知器、2 設置方法(11)イ

”感知区域を構成する間仕切壁及びはり等(以下「間仕切壁等」という。)の上部(取付け面の下方0.4メートル未満の部分をいう。)に空気の流通する有効な開口部(大きさが短辺0.3メートル以上、長辺が間仕切壁等の幅の60パーセント以上)を設けた場合は、感知区域を1として感知器を設けることができる。”

スプリンクラーの増設や移設をせずにオフィスを間仕切る方法

一般的に、11階建て以上のオフィスビルでは、すべての階にスプリンクラーが設置されています。

スプリンクラーの写真

スプリンクラーの設置規定

スプリンクラーヘッドから下方0.45m以内、かつ水平方向0.3m以内には何も設けられ、または置かれていないこと。

(参考規定)

消防法施工規則 第2章、第2節、第1款、第13条の2、4、一、ホ

スプリンクラーの増設や移設をせずにオフィスを間仕切る方法

パーテーション上部に高さ0.6m以上のランマ(開口部)を設ける

【解説】

スプリンクラーが設置されているオフィスを新しくパーテーションで間仕切る際、パーテーション上部全幅にわたり、高さが0.6m以上のランマ(開口部)を設けることで、スプリンクラーの追加工事は不要になります。

※パーテーションの柱は、スプリンクラーの散水障害とならないように、前項に干渉する位置(スプリンクラーヘッドから下方0.45m以内かつ水平方向0.3m以内)に抵触しないように注意が必要です。

図解 パーテーションにランマを設けることでスプリンクラーの増設不要

(参考規定)

大阪市消防局、消防用設備等の設置に係る運用基準、第1章 消火設備、第3節 閉鎖型スプリンクラーヘッドを用いるスプリンクラー設備、第9 ヘッドの設置方法、1 設置位置 (2)

”パーティション等の簡易間仕切の上部は、ヘッドとの間に垂直距離60センチメートル以上の間隔を持たせること。ただし、散水障害を受けるおそれのある部分に別個にヘッドを設置する場合は、この限りでない。”

排煙設備の増設や移設をせずにオフィスを間仕切る方法

排煙設備は、一般的なオフィスビルにおいて、階数が3階以上で、床面積が500㎡ごとに必要となります。

オフィスを新たにパーテーションで間仕切る場合、排煙設備のない区画ができないように注意する必要があります。

排煙設備の方式について

排煙設備の方式は、下記の2種類があります。

自然排煙方式

窓やガラリなど外部に面した排煙口を開け、機械的な動力を使用せずに排煙を行う方法。

機械排煙方式

機械的な動力を用い、ファンなどの排煙機器でダクトを通して排煙する方法。外部に面していない区画や地下階などに設置されます。

排煙設備の設置規定

  • 区画内のあらゆる場所から30m以下となるように設ける。

  • 天井から0.8m以内に、床面積の1/50以上の開口を設ける(自然排煙方式の規定)。機械排煙方式は、排煙能力の規定あり。

排煙設備の増設や移設をせずにオフィスを間仕切る方法

  • パーテーション上部に高さ0.5m以上のランマ(開口部)を設ける。

  • かつ上記の開口面積を区画された床面積の1/50以上にする。

【解説】

排煙設備の設置を義務付けられているオフィスをパーテーションで間仕切る際、パーテーションの上部に高さ0.5m以上のランマ(開口部)を設け、かつその開口部の面積が床面積の1/50以上である場合、隣接する区画と同一防煙区画と見なされ、排煙設備の追加は不要となります。

(参考規定)

「建築物の防火避難規定の解説」

”間仕切壁の上部が排煙上有効に開放されている2室については、原則として同一防煙区画とみなすものとする。ただし、「排煙上有効に開放されている」とは次の条件に該当する場合とする。1.間仕切壁の上部で天井面から50cm下方までの部分が開放されていること。2.当該開放部分の面積がそれぞれ排煙を負担する床面積の50分の1以上であること。”

非常用照明の増設や移設をせずにオフィスを間仕切る方法

非常用照明は、一般的なオフィスビルにおいて、階数が3階以上で、かつ延べ面積が500㎡より大きい居室や、無窓居室などに設置が必要となります。

非常用照明の写真

非常用照明の設置規定

  • 無窓居室(採光に有効な開口部<居室面積の1/20)には、非常用照明を設置すること。

  • 非常用照明は、直接照明とし、床面において1lx(ルクス)以上の照度を保つこと。

非常用照明の増設や移設をせずにオフィスを間仕切る方法

  • 採光に有効な開口部(>床面積の1/20)を確保し、無窓居室としない。

  • 床面積が30㎡以下の場合は、非常用照明の増設は不要。

【解説】

オフィスを新たにパーテーションで間仕切る際、その区画が無窓居室となる場合、非常用照明の設置が必要となります。ランマをオープンとしても、床面で1lx(ルクス)以上の照度を確保するのは難しいため、ランマをオープンにしていても、非常用照明の設置が必要でしょう。ただし、床面積が30㎡以下の場合は、非常用照明の設置に関する緩和規定が適用され、非常用照明の設置は不要となります。

(参考規定)

国土交通省、非常用の照明装置を設置すべき居室の基準を合理化する告示

”「規制の適用を受けない居室」として、次の居室を加える。
・床面積が30㎡以下の居室で、地上への出口を有するもの
・床面積が30㎡以下の居室で、地上まで通ずる部分が次の(1)又は(2)に該当するもの
(1)非常用の照明装置が設けられたもの
(2)採光上有効に直接外気に開放されたもの”

非常用スピーカーの増設や移設をせずにオフィスを間仕切る方法

非常用スピーカーは、地上11階以上または地下3階以下の建物などに設置されています。

非常用スピーカーの写真

非常用スピーカーの設置規定

以下の2つの基準のいずれかを選択できます。

  • 10m基準:区画内のどの場所からも10m以下に設置する。

  • 性能基準:床面から1mの任意の場所で75dBの音圧を確保する。かつ明瞭性を確保すること。

非常用スピーカーの増設や移設をせずにオフィスを間仕切る方法

パーテーション上部にランマ(開口部)を設ける。

【解説】

非常用スピーカーが設置されているオフィスをパーテーションで間仕切る際、パーテーションの上部にランマ(開口部)を設けた場合は、非常放送が聞き取りにくいことがない限り、追加の非常用スピーカーの設置は不要となります。一方、パーテーションをランマクローズとした場合は、前項の設置規定に従って非常用スピーカーを増設する必要が生じます。

誘導灯の増設や移設をせずにオフィスを間仕切る方法

誘導灯は、不特定多数の人が利用する建物や、11階以上の高層階、無窓階、地下などに設置されています。

誘導灯の写真

誘導灯の増設や移設をせずにオフィスを間仕切る方法

避難口を容易に見通せ、避難口に至る歩行距離が30m以下の場合は、誘導灯の増設は不要。

【解説】

誘導灯が設置されているオフィスをパーテーションで間仕切った際、パーテーションを設置した区画内の各部分から主要な避難口を容易に見通すことができ、避難口に至る歩行距離が30m以下である場合は、誘導灯の追加設置は不要となります。ただし、パーテーションの設置により、避難口が見えなくなったり、避難口に至る歩行距離が増加したりした場合は、誘導灯の追加設置が必要となります。

まとめ

オフィスに会議室などを設けるために、パーテーションなどで間仕切る場合、天井に設置されている消防設備の増設や移設が必要になることがあります。これに伴い、追加の費用が発生することに留意が必要です。この記事では、パーテーションの上部にランマ(開口部)を設けるなどの方法により、消防設備の増設や移設を回避し、それに伴う費用を削減する方法について解説しました。

消防設備に関する規定は非常に複雑で、オフィスをパーテーションなどで間仕切る際には、地域の消防署やビル管理会社と綿密な打ち合わせが必要です。

法人専門内装プロは、オフィスのパーテーション工事に幅広く対応し、多くの実績を持っています。また、消防設備に関する調整も含め、各関係各所との連携をお任せいただけます。

大阪7区(大阪北区、大阪中央区、大阪西区、大阪淀川区、大阪福島区、大阪浪速区、大阪天王寺区)において、オフィスのパーテーション工事をご検討中であれば、ぜひ法人専門内装プロにお任せください。