防炎ラベルと防火施工管理ラベルの違いと表示義務について
オフィスの床タイルカーペットや壁紙クロスの一角に貼られた、下のようなラベルを見たことはありませんか? これらのラベルは一体何を意味しているのでしょうか? また、剥がしても問題ないのでしょうか?
この記事では、防炎ラベルと防火施工管理ラベルについて詳しく説明します。
防炎ラベルと防火施工管理ラベルの違い
防炎ラベルは、消防法に定められた防炎性能基準の条件を満たした防炎物品(カーテンやじゅうたんなど)であることを示すために貼付されます。
防火施工管理ラベルは、建築基準法及び建築基準法施工令の「内装制限」に基づき、防火仕上げを行った壁や天井等の防火性能を表示するために貼付されます。
防炎ラベルは、製造者や加工業者がその製品の防炎性能を明示するラベルなのに対し、防火施工管理ラベルは、現場施工管理者が、壁紙と下地基材との施工方法の組み合わせによって、不燃材料、準不燃材料、難燃材料の3種類に認定して貼付するラベルです。
防炎ラベルと防火施工管理ラベルの表示義務について
防炎ラベルの表示義務について
消防法によって定められた防炎防火対象物においては、防炎性能を有する防炎物品の使用が義務付けられています。これらの防炎物品には、防炎ラベルの貼付が義務付けられています。
一般的なオフィスビルにおいては、高さ31mを越える建築物(高層建築物)が防炎防火対象物となり、防炎ラベルの貼付が必要となります。
防炎対象物品
・カーテン・布製ブラインド・じゅうたん等・展示用合板舞台において使用する幕及び大道具用の合板・暗幕・どん帳・工事用シートは、防炎物品でなくてはならないと定められています。
防炎物品を使用しなければならない対象物
法令 | 防炎防火対象物等の建築物 | |
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消防法第8条の3第1項 | 高層建築物(高さ31mを超える建築物) | |
地下街 | ||
消防法施行令別表第1 | (1) |
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(2) |
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(3) |
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(4) | 百貨店、マーケツトその他の物品販売業を営む店舗又は展示場 | |
(5) | イ 旅館、ホテル、宿泊所その他これらに類するもの | |
(6) |
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(9) | イ 公衆浴場のうち、蒸気浴場、熱気浴場その他これらに類するもの | |
(12) | ロ 映画スタジオ又はテレビスタジオ | |
(16) | 複合用途防火対象物の部分で、前各項の防炎防火対象物の用途のいずれかに該当する用途に供されているもの | |
(16の3) | 建築物の地階((16の2)項に掲げるものの各階を除く。)で連続して地下道に面して設けられたものと当該地下道とを合わせたもの((1)項から(4)項まで、(5)項イ、(6)項又は(9)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分が存するものに限る。) | |
消防法施行規則第4条の3 | 工事中の建築物その他の工作物のうち、次のもの
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防火施工管理ラベルの表示義務について
一方、防火施工管理ラベルの貼付については、法的な義務はありません。以前は貼付が義務付けられていましたが、2000年(平成12年)の建築基準法の改正に伴い、貼付義務はなくなりました。
国土交通省大臣官房官庁営繕部による公共建築工事標準仕様書に「建築基準法に基づく防火材料の指定又は認定を受けた壁紙には、施工後、適切な表示を行う。」という規定があります。しかし、民間工事では通常、このようなラベル表示は求められません。ただし、工事に関連する仕様書やビル管理責任者、施工管理責任者の指示によっては、表示を要求される可能性があります。
防炎ラベルと防火施工管理ラベルは剥がしてもいいの?
防炎ラベルと防火施工管理ラベルは、基本的に剥がしても問題ありません。
工事の完了検査と消防検査が終了しているなら、ラベルを剥がすことは問題ありません。ただし、賃貸オフィスの場合、テナント工事の範囲内に関する部分は問題ありませんが、それ以外の部分については、ビルオーナーに確認しましょう。
防炎ラベルの購入方法
防炎ラベルは、商品の購入先より取り寄せる必要があります。商品(防炎物品)を発注する際に、購入先に防炎ラベルが必要であることを伝えましょう。ただし、防炎ラベルのみを単体で購入することはできません。
もし商品が既に納品されており、後から防炎ラベルが必要とわかった場合は、発注先に相談してみましょう。過去の購入履歴が明確であれば、対応してもらえるはずです。
内装工事業者が防炎ラベルを購入する方法
内装工事業者が防炎ラベルを購入するためには、最初に「防炎表示者登録」を済ませなければなりません。
防炎表示者登録の手続きには、公益財団法人日本防炎協会に「防炎表示者登録申請書」(裁断・施工・縫製業)を提出する必要があります。 申請が承認され、登録が完了すると、防炎ラベルの購入が可能になります。防炎表示者登録の審査には約1ヶ月程度かかるため、防炎ラベルを使用する工事を計画している場合は、なるべく早めに登録申請を行うことをお勧めします。審査手数料は22,000円ですが、一度審査が通れば、今後の更新料など追加費用はかかりません。
防炎ラベルの購入は、各都道府県の室内装飾事業協同組合(インテリア事業協同組合)や日本防炎協会の各地事務所で行われます。防炎ラベル交付申請書に、防炎表示者登録番号や防炎物品に示された試験番号などを記入し、それを提出して購入手続きを行います。組合に加入していなくても購入できます。
防火施工管理ラベルの購入方法
防火施工管理ラベルは、「壁装施工管理者」のみが購入と貼付ができます。
防火施工管理ラベルを購入するためには、まず、各地域にある壁装施工団体組合に加入し、各組合が開催している「防火壁装施工管理者講習会」に参加して、「壁装施工管理者」として登録する必要があります。登録完了後、防火壁装施工管理ラベル交付申請書を提出して購入することができます。
防炎ラベルと防火施工管理ラベルの価格
下の表は、防炎ラベルと防火施工管理ラベルの価格の一例です。(2023年6月現在、大阪室内装飾事業協同組合)
防炎ラベル | 施工用 | 90円/枚(税別) |
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ピース用 | 40円/枚(税別) | |
カーテン用 | 32円/枚(税別) | |
防火壁装施工管理ラベル | 35円/枚(税別) |
タイルカーペットには、防炎ラベルは何枚貼る必要がありますか?
タイルカーペットには、防炎ラベルは1つの区画ごとに1枚貼る必要があります。
1つの区画がどれほど広くても、1枚の防炎ラベルで大丈夫です。ただし、パーテーションなどで間仕切った場合は、間仕切られた各区画ごとに1枚ずつ防炎ラベルを貼る必要があります。また、異なる試験番号のタイルカーペットで貼り分けた場合も、それぞれに1枚ずつ防炎ラベルを貼る必要があります。
一級建築士。国立大学工学部卒業後、中堅ゼネコンへ入社し、2001年に一級建築士の免許を取得。2007年にワンナップクリエイティブサービスへ入社し、17年以上オフィス移転やオフィス内装工事に携わり、お客様窓口、設計、現場対応までを総合的にサポートしている。